ここで働き始めて3ヶ月が経った。深夜のシフトにも慣れてきたころ、はじめてDotが私の膝に乗ってきた。
深夜2時。その日は珍しく客が少なかった。私はカウンターで手帳に何かを書いていた。Fogはいつものソファで眠っていた。Dotもその隣で丸まっていたはずだった。
気づいたら、膝の上にいた。
小さくて、温かくて、重かった。Dotは目を細めて私を見上げた。それだけだった。何も言わなかった。何も求めなかった。ただそこにいた。
私はその日、少し泣きそうになっていた。理由は言わない。でも、Dotはわかっていたんだと思う。
「疲れているひとのそばへ、なぜかいつも向かっていく」
真司さんがそう言っていたのを思い出した。Dotはそういう犬なのだ。言葉じゃなくて、重さで伝えてくる。
30分くらい、そのままでいた。Dotはずっと膝の上にいた。客が来たとき、Dotはさっとソファに戻った。何事もなかったように。
でも私は、今でもあの30分のことを思い出す。深夜のLOST & STAYで、Dotが膝に乗ってきた夜のことを。